いつもブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。
本日は、前回に引き続きラベルの用語解説をしたいと思います。
このブログを読んで、ラベルを読みこなして下さい。
本日取り上げる用語は、「生酒・原酒・無濾過・新酒・ひやおろし」です。
これらの用語を理解することで、お酒の違いが理解でき、より自身のイメージするお酒に近いものを購入できるようになります。
「生酒なので冷蔵庫で保管して下さいね〜。」というのはよく聞かれると思います。
わかりそうでわかりにくい言葉ですよね。
生酒を理解する上で、火入れという概念は避けて通れないので、まずは火入について説明します。
火入れとは、簡単にいうと加熱殺菌のことです。
お酒を搾った後も酵素は活動している為、どうしても酒質が変化してしまいます。
そういった酒質の変化を防ぐこと及び雑菌汚染のリスクを排除するため加熱殺菌(火入れ)を行います。
では、本題の生酒とは何か。
ここまでお読みの方は大体想像できるかと思います。
そうです! 加熱殺菌をしていないお酒=生酒なのです。
「でも待って下さい!!加熱殺菌をしないと酒質が変化したり雑菌汚染してしまうのではないですか〜?」と思われた方、その通りです!
加熱殺菌をしないとそういうリスクを抱えることになります。
「でも、生酒ってありますよね?」
その通りです。生酒は販売されています。なぜか。
それが冒頭のよく聞かれるワードにつながってきます。(いわゆる伏線回収っていうやつですね笑)
上記リスクを低減させるために、”冷蔵”する必要があるのです。
弊社では、そういったリスクを排除するためマイナス5℃の冷凍庫に保管しています。(日本酒は-15~16℃でないと凍りません)
生酒は火入のお酒よりデリケートなため、取り扱いに注意が必要なのです。
そんなデリケートな生酒を好む人も多いです。
生酒の魅力とは何でしょうか。
りんごに例えるととてもわかりやすいです。
生酒は、例えると調理等で手を加えていないそのままのりんごのイメージです。
フレッシュ感があり、酸味もしっかり感じられる、溌剌としたあの感じがまさに生酒なのです。
一方、火入酒は煮込んだりんごのイメージです。
煮込むと酸味が抑えられ、味も丸くなり、まろやかな風味になりますよね。
日本酒も同じです。
ですので、味わいに大きな差があるということを理解しておいて下さい。
「おすすめはどっちですか?」という声が聞こえてきそうですね。
結論から言うと、”あなたのお好みによって変わる”です。
日本酒は嗜好品という側面が大きいため、皆様の好みに左右されやすいものです。
高いから美味いとは言えないのが日本酒の面白い所であり難しいところでもあります。
「でも、好みがわからないよ〜」という方もいらっしゃると思います。
そんな方には、前回も書きましたが、”飲み比べ”をして下さい!
百聞は一見(一飲)にしかず。
弊社で言えば、浪花正宗 純米吟醸と浪花正宗 夏生を飲み比べるとよくわかると思います。
上記は同スペックであり、違いは生か火入れかだけなので、生と火入の違いがよくわかります。
生酒だけでかなり長くなってしまいましたね汗
では次にいきましょう。
生酒と混同されやすいワードです。
原酒、、、元々のお酒・・・? わかるようでわかりにくい言葉ですね。
実は、多くのお酒は瓶詰する前に加水(水で割る)されているって知ってましたか。
搾る段階ではアルコール度数が18度とか19度あるのが一般的です。
それを、16度くらいになるまで水を加えているのです。
そうです!水を加える前のお酒=元々のお酒=原酒なのです!(見事な伏線回収ですね笑)
要するに、原酒と書いてあるものは、水で割っていないお酒ということなのです。
どうしても水で割ると香味が薄まってしまいます。
原酒では水を加えていないので、搾ったままの香味を楽しむことができます。(厳密にいうとそうとも言えない場合もありますが、、、)
なので、原酒と書かれているものはアルコール度数の高いものが多かったりします。
ですが、ここ最近は低アルコール化へと向かう風潮があり、8度原酒であったり、11度原酒といった低アルコールの原酒も増えてきています。
よりしっかりとした味わいの酒を飲みたい方は是非一度試してみて下さい。
これは言葉からイメージしやすいですよね。
その通りです。濾過をしていないお酒=無濾過です。
一般的に、お酒は搾られた後、濾過してから瓶詰されます。
そうすることで、搾りかす等をとっぱらい、よりクリアで綺麗なお酒を提供できるようになります。
さらに、搾ったお酒に粉の炭を入れて濾過をする方法もあります。
なぜそんなことをするのでしょうか?
結論から言うと、搾ったお酒を脱色するためです。
日本酒は透明だというイメージを持たれている方が多いと思います。
その通りです。市販酒は透明のものが多いです。
ですが、搾ったお酒が透明で出てくるわけではありません。
麹菌の影響でどうしても黄色っぽくなります。
なので、炭を入れて黄色っぽい色を落として透明にしているのです。
炭濾過には欠点もあります。
炭が色だけ落としてくれるのであればいいのですが、当然香味も落としてしまいます。
日本酒本来の味わいが薄れてしまうのです。
ですので、最近は炭を入れずに濾過する(素濾過)酒蔵も増えてきています。
無濾過と書かれているお酒は、濾過がされていないので、より搾った日本酒に近い味わいを楽しむことができます。
原酒のところで搾ったままの香味を味わえるが厳密にいうとそうではないと書いたのはまさにこの濾過と関係してきます。
原酒であっても濾過(特に炭濾過)をしていれば、香味が薄まっている可能性があります。
なので、厳密にいうとそうではないと記載しました。(伏線回収第3弾)
無濾過と無濾過と書かれていないお酒(できれば同スペック)を飲み比べるとよくわかると思います。
はい、ここまで、生酒・原酒・無濾過と見てきました。
こういう疑問が出てくるかもしれません。
「生酒・原酒・無濾過は組み合わせることはできるのですか?」
結論から言うと、組み合わせ可能です。
ですので、全てを組み合わせた場合、「無濾過生原酒」のお酒と謳うことができます。
字の如く、濾過をせず、加熱殺菌せず、加水もしていないお酒という意味です。
要するに、搾ったまま瓶詰しましたよ〜というお酒ですね。
このように、ラベルにはさまざまな重要情報が書かれていますので、ぜひ読み解いて下さい。
これもわかりやすいけど混同されやすい言葉です。
読んで字の如く、その年に造った「新しいお酒」のことです。
たまに、「新酒だからその年にとれた米で造ってるんだよね?」と言うご質問をいただきます。
結論からいうとノーです。
あくまで、その年に新しく造った、と言うことがポイントなので、造ったお酒に使ったお米が新しいか古いかは関係ありません。
新酒だけどお米は2年前のものですと言うこともあり得るのです。
そこだけは押さえておいて下さい。
筆者が一番嫌いな専門用語です。(業界の人がこんなこと言ってはいけませんね笑)
蔵見学に来られる方に「ひやおろし」って知ってますか?って聞くと大体の方がわからないと答えます。
筆者もこの業界に来るまでは知らなかったし、言われたとしてもわかってなかったと思います。
筆者が、この言葉を知らないと仮定して、字面から連想すると「ひやおろし」→「冷や卸」→「冷やして卸す酒」→「冷酒にむく酒」or「冷やして美味しい時期に飲む酒」と言うふうなイメージになってしまいます。
結論から言うとこの連想ゲームは0点です。
正しくは、冷えた時期(寒くなってきた時期)に卸す酒=秋酒のことなのです。はっきり言って、ひやおろしを秋酒と連想できるとは全く思えません。(ここピー入れて下さい)
筆者が一番嫌いという所以です。
こんな言葉を使ってるから、、、これ以上言うと愚痴になってしまうので留めておきましょう笑
弊社はひやおろしと言う言葉は使わず「秋あがり」と言う言葉を使っています。
少なくとも、ひやおろしよりは秋のお酒というイメージがしやすいと思います。
皆様はどう思いますか? ぜひコメントお待ちしております。
以上、2回に分けてラベルの用語解説をしてきました。(最後は愚痴でしたが笑)
いかがだったでしょうか?
少しでも皆様が日本酒を選ぶ際の参考になれば幸いです。
次回は、テイスティングと飲み比べについてお話ししたいと思います。
江戸時代より続く大阪地酒蔵の蔵元 成子 和弘