粕汁や甘酒を作る時の板状の酒粕と、奈良漬を漬けるための味噌状態の酒粕。
もともと全く同じものだと説明するのが難しい。
酒造業界では、味噌状態の粕を踏込粕(ふみこみかす)と呼ぶ。
酒造シーズンが終わる3月、板状の粕をタンクいっぱいになるまで投げ込み、よく洗浄した長靴を履いた職人が、投げ込んだ粕の上を粕と粕のすき間がなくなるまでよく踏み込む。
そのタンクを密閉し常温で7月まで置いておく。
すると味噌状態になった踏込粕ができる。
そのまま食べても十分おいしい。
自分で粕漬けや奈良漬を家庭で作る人がその踏込粕を買いに来る。
奈良漬会社は、酒造会社から購入した板粕を2年間タンクで熟成してからうりやきゅうりを漬けるとのこと。
酒粕が発酵食品なのでそれに漬けた奈良漬も発酵食品だ。
奈良漬の需要は底堅い。
江戸時代より続く大阪地酒蔵の蔵元 成子 和弘