日本酒の製造過程、麹カビと酵母という2種類の菌が使われる。
こうじとこうぼ、言葉の感じが似ているので混同されている方が多いが、全く別の菌であるし働きも全然違う。
麹カビは、お米のデンプンを糖分に変える働き。酵母は、その糖分をアルコール(お酒)に変える働きをする。
いいお酒を造るには、麹と酵母がバランスよく働くことが不可欠だ。
タンクで発酵中、杜氏は毎日糖分とアルコール度数を測定し、その数字を見ながら温度調節やタンクへ加水を行なう。
安全に発酵を進めるには発酵温度を上げるのが一番なのだが、低温で発酵させないと華やかな吟醸香は出ない。
しかし、温度を下げ過ぎると途中で発酵が止まってお酒にならない。
また麹のみよく働き糖分が出過ぎると、酵母は最後まで働けず、糖分の残った甘ったるい酒になってしまう。
この2種類の菌での発酵を専門用語で「並行複発酵」と言うが、麹と酵母の働き、そのバランスを取りながら発酵を進めるのは、平均台の上を落ちないよう歩いてゆくのと同じような感覚だ。
とにかく、美味しいお酒造りは最後まで気を抜けない。
江戸時代より続く酒蔵の蔵元 成子 和弘