大阪の地で金賞受賞した酒蔵の日本酒の製造工程を、工程順に紹介しています。
<出麹>
できあがった麹米を、外に運び出し、乾かします。
溝をつけて表面積を広くします 。
溝のつけ方ひとつとっても、杜氏一人一人やりかたが違います。
麹乾燥室は、佐藤杜氏の要望により作りました。
部屋の温度は、15度くらいに保たれています。
なぜかというと、麹室の温度が35度、そして外気温が5度。
いきなり麹を30度も温度差のある場所へ出すと、水分を吸って良くないので、いったん15度の部屋にいれて、徐々に麹を慣れさせてゆくのです。
●乾燥させる頃合も、名人杜氏が見た目、味、におい、触感で判断します。寝かせた後の麹は、食べてみると、栗のおいしい味がします。
栗の味に近いほど、おいしいお酒ができるそうです。
<酵母>
アンプルに入っているのが、酵母菌です。
麹によって糖化された米を、お酒に変える働きをします。
最近は、さまざまな種類の酵母が開発されています。
酒母タンクに麹、水、酵母、蒸米、乳酸を入れ、約2週間かけて 酵母を増殖させます。
これを食べると、とても甘酸っぱくておいしいです。
でも、おいしくて飲みすぎると、歯が悪くなってしまいます。
酒母担当者は乳酸で歯が溶かされ、前歯のない人もいます。
<蒸米>
お米を大釜に乗せ、蒸します。このお釜も、ボイラーも相当大きなもので、湯気でまわりが見えないくらいです。
どれくらいの蒸気圧で何分蒸すか、米によって違うので、それも杜氏が毎日判断して決めます。
【二重蒸気層の蒸米器】
平成14年の冬季に導入した二重蒸気層の蒸米器。
これを使うと、米の蒸しが蒸米の理想と言われる 「外剛内軟」になります。
簡単に言うと、蒸米が一粒一粒サラサラの状態なのです。
それでいて、一粒一粒は柔らかい。
今までの蒸米は、蒸米どうしがくっついて、だんご状態になっていました。
「外剛内軟」の蒸米だと、麹菌が米の表面だけでなく、米の中まで 繁殖してゆけるので、均一に米を糖化できるのです。
<米の放冷>
蒸しあがったお米を、シャベルで掘り出します。湯気も熱いし、力仕事なので、汗ダクダクの作業・・・。
布でくるんで運ぶのも、すべて手作業で行います。
蒸した米の2割を麹室に入れます。残りの8割は、そのまま仕込みタンクに入れます。
<製麹>
麹菌の種を散布し、むらがなくなるように、人の手によって、まんべんなくほぐされます。
そして布をかけて、麹菌を繁殖しやすくします。
麹室の温度は、35度。
入ると、あたたかくて、麹のにおいが充満してます。
●麹造りは、赤ちゃんを育てるのと同じくらい大切に行ないます。
大吟醸の麹造りは、夜中でも3時間置きに様子を見て、室温を調節したり、かき混ぜたりし、最も自然に麹が繁殖するよう見守り ます。
一晩ねかせたお米は、麹菌が繁殖して、表面が、ちょっとうぐいす色っぽくなります。
発酵しているので、中のほうがあったかくなります。
40度くらい。
一晩たったら、固まった米を再度、ほぐします。
機械だと麹菌がとんでしまうので、手作業です。
そうして、むらなく、麹菌を繁殖させます。
●赤んぽうをくるむように、やさし布でくるみ、寝かせます。
酒米の選定は一番重要な作業のひとつ。
地域により年々、米のできばえが違うので、相当丹念に選ばないと、気に入ったものが手に入りません。
吟醸・大吟醸は、酒米の王様、兵庫県産の山田錦を使用しています。
●酒造用の米は食用の米と違い、たんぱく質が少なくやわらかいのです。
炊いても腰がなく味気がありません。
<洗米>
洗米は、いい酒造りにとって一番大事な工程です。
10kgずつザルに入れ、ひとザルずつていねいに洗います。
洗米の仕方、また浸漬時間によって米の蒸し上がりが全然違うので慎重に作業します。
<仕込み水>
蔵のある泉州地域は和泉山脈からの清冽な伏流水により、文字通りとても豊富で良質の地下水に恵まれています。
仕込みに使っている蔵内の井戸は創業以来300年一度も枯れたことがありません。