浪花酒造の新着情報公開
売れるお酒とは人気ある酒。日本酒はどれも透明の液体なので、視覚でこれは美味しいとか判断できない。ビン形やラベルデザインで選ぶ人もいるが、ネットランキングで上位だ、きき酒専門家が美味しいと言った、有名タレントが宣伝しているなどの人気で選ぶ人が圧倒的だ。そのような人気銘柄の酒とそうでない酒、よく目隠しで飲みどれだけ違うのか確かめている。実際違いがわからない事が多い。それほどイメージが味覚に与える影響が大きいということだ。実際自分で味見してから購入することをお勧めする。
この連休中、直売所ずっと営業していたが、予想以上に来客に恵まれた。近くのイオンモールやアウトレットが緊急事態宣言で営業していなかったので、そのお客さんが流れて来てくれたのかも。一番の人気商品は「蔵出し生酒」。冷蔵タンクに入っている純米吟醸生酒をお客さんの目の前でビン詰め。キャッチコピーは「ここでしか買えません!」。全国の名産品、何でもネットですぐに買える時代。そこに行かないと買えない商品だから逆に人気あるんだと感じた。製造元 直売商品。ここでしか買えないものをもっと考えてゆかねば~。
同じお酒を飲むのでも、どんな器で飲むかによって美味しさが違います。普通酒(燗酒)がメインだった頃は、猪口(ちょこ)という50mlほどの小さな陶器の器で飲んでいました。なぜこんなに少量なのか?昔は宴会時、各自、猪口を持って宴会参加者全員とお酒を酌み交わすという習慣がありました。小さい器でないとすぐに酔ってしまうからです。でも、華やかな香りを楽しむ吟醸酒や大吟醸などは、小さな器だと香りを楽しめません。吟醸酒や大吟醸はワイングラスで飲むのが一番だと思います。ただワイングラスは値段が高いし、洗浄もやっかいで、ちょっと油断するとすぐに割れてしまいます。私が日頃使っている器は、ワイングラスの足の部分がない、お酒を入れる部分だけあるグラス(チューリップの花の形)を使っています。これは百円ショップで売ってます。
吟醸酒とか大吟醸酒は酒米を半分または半分以上削って(精米して)から使うので、よく「もったいない!」と言われます。でも心配ありません。米ぬかや米粉、それだけでちゃんと利用されています。米ぬかは、玄米の一番周囲の部分で色が茶色っぽい。油分が20%近くあり植物油脂の重要な原料となっています。その他、肥料、漬物、きのこの培養に使われています。米を精米してできる粉は最初茶色(米ぬか)ですが、精米を進めるとだんだん白くなってきます。これが米粉です。米粉を使って、もち、だんご、おかき、せんべいなどを作っていますが、最近は技術の進歩で、パン、クッキー、ケーキなども作れるようになりました。
国内での日本酒消費量は減る一方だが、輸出はどんどん伸びている。これは、世界的な和食ブームで日本食レストランが増えているので、それにくっついて日本酒も増えている。和食が人気の理由は、全般的にカロリーが低くヘルシーな事。日本人が世界一の長寿国なのは、ヘルシーな日本食を食べているからだと思われている。特に中国、香港での伸びが著しい。浪花酒造も20年前から主に香港に輸出しているがもちろん伸びている。香港から中国本土に入ってるものもあり、中国は大きな市場になると思われる。香港ではお酒に関税がかからなくなったが、中国はまだまだ高い。中国では日本国内の3倍くらいの価格になる。早く関税が低くなることを願っている。
私は、大学を卒業したあとメルシャンワインに入社。山梨県のワイン工場でワイン製造していました。ワインと日本酒の製造方法を比べるとワインはメチャクチャ簡単です。ブドウを破砕しジュースにしてタンクに投入、酵母を入れるだけ。1週間~3週間の発酵でワインになります。ワインの良し悪しは、8割方その年のブドウの出来で決まります。よく何年産のワインがいいと言いますが、それはブドウの出来が良かった年です。貯蔵年数ではありません。貯蔵年数が長くて美味しいものもありますが、味の評価だけでみると5年くらいが最高。もっと古いのは骨董品的な価値です。
販売戦略として一番の違いは、ワインは10万円、20万円のものがいくらでもありますが、日本酒はいくら高くても1万円。10万円のワインと言っても原料はブドウです。ダイヤモンドが原料ではありません。それでもそんなに高く販売できるのは、ストーリーや付加価値を作るのが上手なのです。日本酒はワインに比べ10倍くらい手間ひまをかけて製造しているのに、1万円以上のものが無いに等しい。どこの日本酒メーカーもストーリーを考え、自信を持って5万円、10万円の商品を作っていって欲しいです。
お酒は食品産業ですが、昔(明治時代)から酒税というものが課せられているので、監督官庁は、厚生労働省(保健所)ではなく、財務省(税務署)です。なので、保健所は酒類メーカーに監督指導には来ません。税務署員が来ます。また各県の国税局には国家公務員上級の技術職で採用された方が鑑定官室という部署に配属されています。酒を専門に勉強し全国の酒造メーカーの技術指導に回っています。なので、酒造メーカーは鑑定官の方々を先生と呼びます。この鑑定官の先生方が中心となって鑑評会で審査を行ないます。審査は銘柄を伏せてすべて鑑定官の舌(感覚)のみで判定します。全国のほとんどのメーカーが全国鑑評会に出品する事で酒造技術の向上に役立っていますが、みんな金賞受賞するような味を目指して造るので、どこのメーカーの大吟醸も同じような味になってしまうのが難点です。
今どき、井戸水を使っている家はほとんど無いだろう。もし井戸が残っていても、飲み水として使えるところもほとんど無いだろう。浪花酒造の井戸は、300年前の創業当時からずっと湧き出ており、これまで涸れたという話を聞いたことがない。酒造期間は、仕込みだけでなく、酒米、酒造用具、タンクなどの洗浄に毎日何千リットルもの水を使う。今でも全く涸れない。浪花酒造の命と言っても過言ではない。食品メーカーで井戸水を使う場合、食品衛生法で26項目(細菌、水銀、ヒ素、鉛、フッ素、有機リンなど)すべての基準値をクリアーしないと使用不可だ。毎年、検査機関で検査してもらっているが、毎年すべてクリアーしている。和歌山との県境、和泉山脈に20年前降った雨が長年に渡り地下できれいにろ過され井戸水となって湧き出ている。この命の水が汚染されないよう、常に周囲の環境に気を配ってゆかねばならない。
全国に「正宗」と付く日本酒が100近くある。よくなぜ正宗が多いのか質問される。最初に正宗と付けたのは神戸の「桜正宗」だそうだ。桜正宗の社長が「臨済正宗」という字をお寺で見て、「正宗」は「せいしゅう」と語呂合わせがいいので酒の名前しようと決めた。他の蔵もこの正宗という名前を気に入ってマネするようになったそうだ。あと名刀正宗という有名な刀があるが、その刀は切れ味がいいので、お酒の切れ味もいいというのも理由の一つらしい。
よく、貴社のお酒に合う料理は何ですか?と尋ねられる。なので、日頃から食事をする時、この料理は日本酒に合うのだろうかと試しながら飲む事が多い。一般には、造りや魚や野菜の煮物、焼魚、漬物、豆腐料理など和食系が合うと思われている。もちろん和食に合うが、案外どんな料理にも合う。合わないのは、ステーキ、空揚げ、焼き肉など、濃い味の肉料理だけだ。意外に合うのが、チーズを使ったイタリア料理、洋風ソースを使ったフランス料理、カレーなど。実際、大阪のロイヤルホテルではフランス料理と日本酒を楽しむ会「和魂洋才」がとても人気があり十数年続いている。イタリア料理のお店でも日本酒を勧めている店が多い。
私が一番合うと感じている我社の吟醸系の酒のアテは和の素材ではなく、表面が白いカビのカマンベールチーズ。普通にスーパーで売ってるので、一度是非吟醸酒のアテで召し上がってみてください。